工具 よもやま話
切る道具について / 穴あけ工具(その1) / 穴あけ工具(その2)
【 切る道具について 】
道具選びで大切なのは3つあります。
・ 当該作業の目的
・ 道具本来の使用目的
・ 使用者本人の技術レベル
この3つが適切でなければ、良い仕事はできません。
ひとつでも欠けると、良い結果を得られなくなるばかりでなく、場合によっては大きな事故につながります。
日常生活の中で、何気なく使っている自分自身の「手」。この「手」も、とても優秀な道具です。つかんだり、ちぎったり、伸ばしたり、投げたり、多くの作業をこなしてくれます。
しかし、作業の質や効率を向上させるためには、どうしても手だけでは限界があります。鉄を熱いうちに素早く曲げたり、大きな木を切ったり、などは手だけではどうにもなりません。
より速く、より効率的に、そしてより安全に作業を進めるために、様々な道具が開発されて来ました。例えば、皆さんご存知の「ノコギリ」も、その歴史は古く、人々の様々な
知恵と工夫をうかがい知ることができます。
日本では古墳時代のものとして、鹿の角を切る為のノコ刃の原型らしきものが発見されています。そして鎌倉時代から本格的に横挽きノコが普及し、縦挽き刃はさらに後になります。
西洋では、ノコギリそのものはエジプト時代から使われたとされ、一般的に木材のノコが広く普及したのはそれよりずっと後とされています。そもそも石の文化なんですね。
木材は 斧で切ってくさびで割りながら、何とか板に仕上げたそうです。
しかし、くさびで割る板材は木の質に大きく左右されてしまします。そして作業自体の労度も高いため、大変に高価なものだったそうです。
板の仕上げには、ちょうなや槍かんなを用います。今でも神社仏閣の補修では、昔ながらのちょうなと槍かんなは必需品です。平安からの昔の工法を今に伝えるのが宮大工です。
平安・奈良の神社仏閣が、ノコギリ無し、釘かすがい無しで建てられているのには今更ながら驚きます。
ノコギリは押したり引いたりの繰り返しで木を切りますが、日本と西洋では異なっています。日本のノコは引き切りで、西洋のものは押し切りです。力の無い東洋人は軽く引けるように薄く刃を作りました。
一方、力のある西洋人は押して切る分厚い刃となっています。押したり引いたりの機械ノコを発明したのはイギリスです。蒸気機関車の動輪連結駆動させるアームがノコ刃となったそうです。往復運動式のノコはパイプソー・セーバーソー(レシプロソー)として弊社にも在庫があります。
最後になりますが、先日被災地で、電気も無い状態の気仙沼にて、実家の為に2週間ばかりで、4人が生活する掘っ立て小屋一軒を建てた知り合いの大工さんがいます。その大工さんが、持って行ったのは、 ノコ・ノミ・カンナ・玄翁だけでした。
これで流された廃材だけを利用して、平屋一軒建てて帰って来たとの事です。電動工具無しで家をほぞ組みで仕上げてしまう、日本の大工の技はすごいものだと改めて思いました。電動工具に慣れすぎた今の若い大工ではできない仕事なのかもしれません。